作品感想&紹介

『天冥の標』ついに映画化!(希望)

いぇん

紛らわしいタイトルですみません!
SF長編小説『天冥の標』のアニメ映画化を熱烈に希望している私です。
映画にして是非世間に認知してもらいたい作品です。
「読んでくれよ!」と皆さんにぶん投げたいのですが、なにせ17冊に及ぶ超大作です。
ここではざっくり今オススメしたい理由を書きました。

あらすじ概要は是非こちらの記事を読んでほしいです。
パンデミック後、宇宙へ進出した人類の運命は? SF大作「天冥の標」シリーズの啓示

この本を映画化してほしい理由

パンデミックから始まる物語だから

このコロナ禍だから読んでほしいのです。
小説内の2015年、
突如現れたウィルスにより地球全土でパンデミックが発生します。
高い感染力、致死率を持ち、血なまぐさい描写が続きます。
東京の新宿御苑公園に作る仮設病院には人が溢れかえり、
防護服を身に着けた医療従事者たちも命をかけて治療に当たります。

あまりに恐ろしいその病気から、
感染者は恐れられ、隔離され、差別され、憎まれます。
手っ取り早く無人島へ送られ、後に月へ送られ……。
その分断は人類が地球外の星に進出して暮らすような遠い未来に至っても、
慣習や思想と化した隔たりとして続きます。

私たちの現状と酷似していないでしょうか。
コロナの力がもっと強くなれば、
こうなってしまうんだろうか、と恐れの気持ちを抱いています。
そして感染者たちになんの否もないんだという叫びは、
この作品も現状も一緒です。

壁なんかもういいのよ

最終巻が刊行された直後の2019年2月、
トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を築くと声高に叫んでいた時期でした。
その最終巻では見越したようにこんな言葉が出てきます。

「病気や制度がなくなってもさ、敵をやっつけたい、馬鹿にしたいっていう人間の心の底の気持ちは、消えないと思うけどさ。僕たちは、そういうところがある。でもーー」
「でも、なに?」
「でもね。たとえば君のような人間が、いつでも出てくる。いつだって出てくる。壁を作るんじゃなくて、乗り越える人が。これも人間の本当だから、消えないよ」

天冥の標10巻PART3 P359

壁を作る人もいれば、壁を乗り越える人もいる。
いつだって。いつの時代だって。

私たちは現に分断され始めています。
2020年1月現在、
隔離の後に社会生活に復帰できるものと思っています。
これが大きな溝になるとは今はまだ誰も思っていません。
いえ、そう私が感じているだけで、すでに溝が出来始めているかもしれません。
この鈍感さにも注意を払わなければならないと思います。

感染した人、免れた人

恐れて攻撃する気持ちは分かります。
誰かを、何かを守りたいゆえだと思います。

しかし感染した彼らに落ち度があったと責められるでしょうか。
コロナのために衣食住を失う人がいます。
彼らの努力が足りなかったからでしょうか。
何かの拍子で、そうなるのは自分です。私です。
自分の力ではどうにもならなかったことを、
やんや言われる苦しみ、それを飲み下す苦しみを常に想像していたい。

感染した人と免れた人。
またその狭間に入って、両者を繋ぐ努力をする人々がいます。
この小説の中でも医師がその役割を果たしていきます。
また感染者の家族や友人。
物理的に隔たれても切れなかった思いだけが、
距離を超えて支えを生みます。

遠い未来でもまだ命のことを考えている

パンデミックから始まる話ですが、
全17巻の中にはたくさんのテーマが散りばめられています。
中でもみんな大好き生殖にまつわる描写は強く印象付けられています。
グロテスクと言ってもいいほどに追求します。

何はともあれ生きて続いていくためです。
サイボウグになろうが、病気を抱えようが、性別に困難があろうが、宇宙人だろうが。何を食べていようが、何を信仰していようが。
命は長く長く続いていくことを目的としています。
この小説で数千年の命の営みを俯瞰するような、
長大なスケールの視野の一部を獲得出来ます。

だから是非読んでほしい。
美しい文章や、文字でなければ表現できない情報などがあるから
是非咀嚼して味わってほしい。
けど手っ取り早くアニメ映画化してほしいです!
10億円当たったら制作費に全額寄付するから!足りるかわからないけど!

奥付

最終巻の奥付より

著者:小川一水
発行者:早川浩
発行所:早川書房
カバーイラスト:富安健一郎
カバーデザイン:岩郷重力+Y.S
印刷者:矢部真太郎
印刷:三松堂株式会社
製本:株式会社川島製本所

まさかの17冊全巻まとめて電子書籍で読めます!
文庫本で買うより全然安いですが9,999円て初めて見ました笑
猛者は是非!


ABOUT ME
つきよの
昭和生まれのおひとりさま女性。人付き合い苦手、父親に殴られ男性不審、10年付き合った彼氏にお金を貸して破局、大学中退、うつ、社畜、不当解雇、といった経験を飯の種にして「自分に正直に生きる」をモットーにしています。人生いろいろありますよね。

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