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儚くて憂鬱、SF好きにもおすすめの漫画『宝石の国』

こんにちは。
私、いぇんの本棚にあるものを脈絡なく紹介していきたいと思います。
題して「ぶらっと、本屋。」シリーズ。

宝石の国 市川春子

著:市川春子
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こちらは2017年にアニメ化もされた作品。
漫画は未完なのでアニメも途中で終わっています。
最近一年ぶりに連載再開となり、きゃー!!となっています。

絵が綺麗、だけど独特な読みにくさ

独特な絵です。あれ?この子の腕どこについて…ああ、これか。
えーとどういうポージングになってるん?

表紙からしてそんな独特な絵です。
描き込みの少ない細い線で描かれていて、全体的に細いタッチ。
迫力がないとは言いませんが、絵からくるパワーがすごい!という感じではないです。
むしろ、「絵が細いのに突きつけられる圧倒的な展開とのギャップ」が、
盛大なパンチになって聞いてきます。

余白、余韻を伝えるの書き方です。
アニメではその捉えにくい余白をわかりやすく表現してくれていますので、
アニメからご覧になるのもいいと思います!

宝石の擬人化

こちらの宝石の国では、
馴染みのある宝石がキャラクターとなって活動しています。
ダイヤモンド、レッドベリル、アメシスト、アレキサンドライトなどなど。

色の特徴はもちろん、
鉱石の靭性(じんせい)と硬度を、
そのままキャラクターの特徴、ステータスとして反映しています。

硬度…硬さ
靭性(じんせい)…衝撃に対する強さ

例えばダイヤモンドは硬いというのが一般的なイメージだと思いますが、
単結晶「ダイヤ」は硬度が10、靭性は7.5。
靭性とは劈開(へきかい)と呼ばれる特定方向へ割れやすい性質のことで、
ダイヤは硬いのですが、ある方向からの衝撃が加わると割れやすいという体質です。

一方、多結晶の「ボルツ」は硬度が10、多結晶で劈開がないため衝撃にも強いです。
ボルツもダイヤと同じ成分で出来ていますが、
価値ある輝きを放っているダイヤとは違い、宝飾品としての価値はほぼなく安価です。

ダイヤとボルツはきょうだいという設定で、
二人はキャラクターたちの中でも戦闘において強いという設定になっています。
美しくかわいいダイヤですが、ボルツほどの決定的な強さには届かないことに劣等感を抱いています。

など、宝石の鉱物としての特徴と、人間社会から見る宝石の評価とが入り混じって、
興味と愛着が湧くキャラクターたちばかりとなっています。

回を追うごとに強まるSF色 それが市川春子らしさ?

独創的な見た目のキャラクターが多く、おそらく女性の方が手に取りやすい絵柄かなと感じていますが、
回を追うごとにSF色が濃くなっていきます。

これは作者、市川春子さんの短編集からも伺い知れます。
商品説明を引用していますが、そこからして謎が散りばめられていて、物語へと誘います。
そしてそのオチのあり方といったら。
読後は深さのわからない穴へとゆっくり沈んでいくような感じです。

僕の妹は、僕の指から産まれた。妹への感情は兄妹愛のそれを超え、「ひとつになりたい」と願う。(『星の恋人』)

飛行機墜落事故で生存した大輪未来と天野すみれ。助け合う二人に、意外な形で別れの時は来る。(『ヴァイオライト』)

肩を壊した高校球児の雪輝。日々”成長”を続けるヒナとの出会いで、彼が見つけたものは――。(『日下兄妹』)

3人の兄妹が暮らす家に夜の闖入者、それは虫であり弟であった。共同生活を始めた彼と兄妹たちの距離は縮まりーー。(『虫と歌』)

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深海生物圏研究室に勤務する西 乙女は、休暇を取って久しぶりに弟の甲太郎と再会する。深夜25時の海辺にて乙女が甲太郎に見せたの は、貝に侵食された自分の姿だった。(『25時のバカンス』)

土星の衛星に立地する「パンドラ女学院」の不良学生・ナナと奇妙な新入生との交流 を描く。(『パンドラにて』)

天才高校生が雪深い北の果てで、ひとりの男と共同生活を始める。(『月の葬 式』)。

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個人的にはこの25時のバカンスはどのお話も「感情」が焦点の一つです。
またどれも科学的、学術的な分野の話題が、物語の根幹に関わってきます。
(詳しく解説出来るほどの知恵はないのですが)

のどかだと思っていた世界が、先進的科学技術の結晶だった、とか。
あるいは逆に荒唐無稽なおとぎ話のような願いが、科学技術を超えた先で現実になるなど。

今、接している現実の前後には何があったのか。
フラットな気持ちで捉え直すと、どこか怖くもあり、どこか希望もあり。
それがあの警戒を抱かせない細い線でするりと描かれてしまうのですよね。

朗らかな世界と合理を追求した世界は、
地続きだと知る作品

朗らかで牧歌的で能天気で平和に見えていた世界。
その内側、裏側で何が起きているのか、読み進めながら主人公と一緒の視線で少しずつ知っていきます。
どんどん仄暗くなっていくこれからの展開に目が離せません。

そしてこの脳天気な平和と、どこまでも合理的な現実というのは地続きで、
並行して存在しているということにドキリとさせられる作品です。

能天気でムードメーカーでみんなから愛されていた主人公が、
必要にかられた結果とはいえ、力を得て、孤独に堕ちていく。

幸せの裏には不幸がある。
光と影がある。いつも、どこにでも、同時に存在している。
そしてそれらは地続きである。
私達はそのどちらにも、どんなときにでも、どちらにでも振れる事ができる。
そんな想像する力を混ぜ起こすような作品です。

ABOUT ME
いぇん
「ぶらっと、」を運営しているお一人さまです。 テーマは《本の感想》 《おひとりさまな生活》。実感ある生活を大切にしたいと思っています。 || 0型、牡牛座、芸術系大学中退、うつ病歴あり||

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